歌う機械

 『ロボットはしょせん人間の道具なんですから。人間らしいロボットなんて、結局なんの、意味もないんですよ。デジタル時計を突き詰めて、究極的な疑似アナログ時計を作ったところで、そこになんの意味があるかというと、作り手の満足だけで』(長瀬源五郎

 良い爆釣りだなあと思いつつ、すぐに食いつけなかった自分のアンテナの感度の低さを悔やんでみたりするのです。自称ボカ廃の名が泣くぜい。ともあれ、遅ればせながら何か書いてみよう。

 とは言っても、僕は増田の言い分に反対ってわけでもないんですよ。ボカロの声は気持ち悪いと思うのが正常な感覚だと思います。僕たちボカ廃は訓練されすぎだ。無料でアマチュアの歌を聴くなら、金を払ってプロの歌声を聴くべきだってのも賛成。無料のものってやはりそこそこのレベルでしかないしね。まあ、CDを買うよりはライブの会場へ行ったほうが良いかなあとは思いますが

 で、僕はといえば、ボカロは機械だから好きなんだよね。ミクさんの歌声を聴いて思い浮かべるのは「歌う船」のヘルヴァだったりします。機械の歌声ってこういうものなんかなあとSF心が揺さぶられると言うか。SFファンに怒られないよう蛇足しておくと、ヘルヴァはロボではなくてサイボーグです。ただ、声帯など歌うための器官を持ってないと言う意味でミクさんと似たものを感じると言うことで。

 実際のところどうなんでしょう。ボカ廃の人ってボカロを人間の歌手の代替で捉えてるんですかね? ボカロはボカロ、人間は人間で区別して聞いてるような気がするんですけどね。代替として考えたら、ボカロは劣化したボーカルでしか無くなってしうまうわけですし。僕なんかはロボ声が好きすぎて、段々と人間の歌声を聴かなくなってるんで、脳が退化してると言われればその通りの状況なんですけど。

 話が逸れますが、僕はロボ声が大好きだから調教って作業にあんまり興味がもてなかったりするんだよねえ。”自然な歌声に近づける”って機械声LOVEの立場からすると、それこそ劣化の作業に思えちゃうんですよ。ブレスなんてつまりはノイズでしかないしね。声の揺らぎとかって、揺らがない方が上手な歌い手のようにも考えられますし。ピッチドリフトなんて人間の歌い手なら修正の対象になっちゃうものでしょ?

 まあ、ボカロが目指しているのは人間とそん色ない歌声であり、バージョンアップはある意味では劣化の歴史になって言うのかもしれません。でも、VOCALOID10くらいには人間と間違うくらいの歌声になってるのかもしれず、その時は「歌が上手いとはどういうことか」って本質的な問いを僕達は考えなければならないのでしょう。

 ちなみに冒頭の言葉は飾りであって、本文とは関係なかったり?